はじめての福祉機器の選び方・使い方 ベッド編
ベッドは、身体の動きにくくなった人が身体を動かしやすくできる寝具です。一人ひとりの身体の状況と能力に応じて、身体の動かし方とベッドの電動機能とを上手に組み合わせて使います。
一人ひとりの使い方に応じてベッドの電動機能を選択します。
ごろんと横に回転するだけの寝返りをすると、マットレスの幅が900mm前後では、柵にぶつかりやすくなります。一般のベッドと同様に1,000mm以上の幅が欲しくなりますが、介護がしにくくなります。
身体の機能が十分なら、お尻をひくようにして寝返りすれば柵にはぶつかりませんが、眠っていて無意識に寝返るとやはりぶつかります。
なお、身体を思うように動かせない要介護者の場合は、介護のしやすさを考えてベッドの幅を狭めにします。
ベッド柵を使い、筋力によってベッドの背上げ機能を使い分けると、起きあがりが容易になります。
筋力によって起きあがる動作は異なります。
自分の筋力だけで起きあがるときは、肘を高めにつき、反対側の手で柵を掴み(図1)、頭を斜め前に上げながら足をおろし、マットレスを手のひらで押すようにしながら肘を伸ばして起きあがります(図2)。
このような動作では起きあがれなくなったら、仰臥位のままベッドの背を上げて、同様に柵を利用して起きあがります(図3)。
さらに筋力が弱くなったら、まず側臥位になり(図4)、さらにベッドの背を上げて起きあがります(図5)。背上げの角度は自分で起きあがれる角度に調整します。
介助者が起きあがらせるときは、まず側臥位をとり、足をおろしながらベッドの背を上げて(図6)、起きあがらせます。平らなベッドから起きあがらせる方法と比較すると格段に介助が容易になります。
ベッドの端に座った姿勢を端座位と言います(図7)。寝た状態でベッドの背を上げた姿勢ではまだ寝ているのと同じですが、この端座位から起きた姿勢といえます。
端座位を安定させるためには、必ず足裏がきちんと床につく高さにベッドを調節し、移動用バーをつかんで体幹を安定させます。
この姿勢なら上肢も使いやすく、食事などのいろいろな作業も可能になります。ベッド上で何かをしなければならないときはできるだけこの姿勢で行いましょう。端座位で使用できるテーブルもいくつかあります。端座位では体幹バランスが悪く倒れてしまう場合には、背もたれがついたテーブルを使うのも一つの方法です(図8)。
| 端座位から立ち上がるには、まずはベッドの高さを高くします。低い位置から立ち上がるよりずっと楽になります。
足を引き、頭を前に出すと楽に立ち上がれます。このとき、ベッドの移動用バーの前方をつかむと自然に頭が前に移動します(図9)。
移動用バーを上から押すようにして上肢の力も利用して立ち上がります。 |
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ベッドは寝具であって、生活の場ではありませんから、日中はできるだけベッドを離れて生活することをおすすめします。ベッドを生活の場にせざるをえない状況では、ベッドの背上げ、膝(足)上げ、全体の昇降と、3機能を上手に使い分けます。
ベッドの大きさは部屋の大きさなどに合わせる必要がありますが、身体の大きさにも合わせて選ぶことが重要です。身体の大きさと比較して大きすぎるベッドはいろいろな問題を生じさせます。
寝る人の股関節とベッドの背が上がる位置、また人の膝の位置とベッドの膝が上がる位置を合わせます。一般的には大腿長に相当する長さ、すなわち、膝の位置で選択・調節します。
膝の位置が合っていないと、いわゆるずっこけ姿勢になったり(図10)、膝の裏を持ち上げられて不快です。図10のようになりますと、褥瘡(床ずれ)を作りやすい仙骨部周辺の圧力が高くなります。また、この姿勢では上肢が使いにくく、自分で食べられる人でも食べられなくなるということも起こりえます。まずはしっかりと端座位をとることが必要ですから、ベッド全体の昇降機能で高さを調節しましょう。
ベッドの背を上げたときに、身体がずれず、体幹をできるだけ起こせるものを選びます。
身体をずらさないためには、背を上げる前にベッドの膝を上げてお尻がずれないようにしてから背を上げます。
このような方法で背を上げると、胸やお腹が圧迫されて苦しくなります。ある程度背を上げたら、介助者が本人の体幹を前に起こしてこの苦しさを開放します(図11)。背上げ機能いっぱいまで起こす場合はこの動作を2〜3回繰り返します。
ベッドの背を元に戻すときは、一気に平らまで戻しますと、寝ている人にとっては頭が下がりすぎる感じがして気持ち悪くなる場合があります。骨盤を左右にゆすりながら背を戻したり、時間をかけてゆっくり元に戻します。
また平らにしたとき、身体の下が突っ張る感じが残り不快になることがあります。その場合には一度側臥位にして身体の下の突っ張り感を除去します。(図12)。
身体を動かさずに寝ていると、褥瘡を作りやすくなります。褥瘡を防ぐためにはとにもかくにも身体を動かすことですから、自分で動かせない場合は頻繁に体位変換を必要とします。介助力が不足する場合には何らかの形で用具、すなわちこの場合にはマットレスに依存しなければなりません。
この場合のマットレスは体圧を分散させることが目的です。接触圧が毛細血管圧よりも低くならないと、褥瘡対策にはなりません。毛細血管の血流を阻害するからです。このためにエアマットレスや圧力分散特性に優れたウレタンマットレスが使われますが、これらのマットレスでは身体が沈むことによって、自分で体位変換をしにくくなることに注意しましょう。身体を動かせる人が使うと、身体を動かしにくくなることでかえって寝たきりとなってしまう原因にもなりかねません。
ア)エアマットレス(図13)
褥瘡ができているか否か、褥瘡のできやすさなどによって異なりますが、
一般的には以下のようなことに注意して選択します。
- 圧力を体重に応じて調節する
空気圧によって体重を分散させていますから、体重の軽重に応じて空気圧を調節する必要があります。体重によって圧力調整ができるものを選びます。
- 背上げ姿勢を長くとるときは臀部圧力を高められるものを
ベッドの背を上げると、体幹部の重量が臀部にかかってきます(図14)。マットレスの空気圧は寝ている状態で調節していますので、起きあがると臀部の部分に重みが集中してマットレスがそこだけ沈み、「底付き」します。このため起きあがったときには簡単に臀部の圧力を高められるものを選択しておくと、安心して起こすことができます。
- 緊急開放バルブがあるものを
エアマットレスの空気を抜きたいときに、すぐに空気を抜く機能が緊急開放バルブです。ベッド上で身体をずらすなどの動作が必要な場合には、空気を抜いた方が容易に行えます。このようなときに緊急開放バルブがあると短時間で空気を抜き、動作がしやすくなります。
- 酔う人がいます
エアマットレスのチューブは接触圧を変化させるために、一定の時間ごとに空気が入ったり、抜けたりするものが一般的です。このことによって、船に酔うような感覚をもつ人がいます。絶えずマットレスが動くということを不快に思う方がいるかもしれません。
イ)体位変換機能付きベッド
価格が高めですが、自分で寝返りをすることができない人の寝返りを自動的に支援する電動ベッドがあります。一定時間ごとに自動的に、あるいは自分でスイッチを操作して、側臥位になったり、仰臥位になったりします。マットレスでこの機能を持つものもあります。
ただし、あまり大きな角度の側臥位にはなれません。

ベッドは車いすやポータブルトイレなどから移乗しやすいということも特徴の一つです。このことによってADLを維持し、寝たきりを防止します。
移乗は、立位で、座位で、持ち上げて、とおおむね3種類の方法があります。完全自立で行う場合から、全介助まで介助量が徐々に増えていきます。
立位で移乗するためには立ち上がれて、回転できて、静かに座れることが必要です。このために、ベッドの移動用バーを上手に利用します。
(図15:立ち上がる、16:回転する、17:着座する)
立位が不安定になっていたら、安全のため座位で移乗します。座位で移乗するためには、車いすやポータブルトイレのアームレストが着脱できるか、跳ね上げられることが必要です。(図18:車いすのアームレスト、19:ポータブルトイレのアームレスト)。
お尻を滑らせるためには、トランスファーボードやスライディングシートを使います。
ア)身体を斜め前に傾けると、反対側のお尻が浮き上がり気味になりますから、ボードやシートを差し込みます(図20、21)
イ)ボードやシート側に体重を傾けて移動します(図22、23)
ウ)動きが止まったら、反対側に身体を傾けるとさらに滑って移動します(図24、25)
エ)身体を傾けてボードを立てるように引き抜くか、シートの場合は重なっているシートの下側を引き抜きます(図26、27)。
持ち上げなければ移乗できなくなったら、リフトを使います。リフトは本人・介助者双方にとって安全で安心できる道具です。暖かくて、人間的な移乗用具と言えるでしょう。使い方が命ですから、必ず丁寧に使い方を教えてもらいましょう。
ア)ベッド固定型リフト
ベッド周辺で使うには安価で使いやすいリフトです(図28)。
わが国独自に開発されたリフトです。
イ)据え置き式リフト
ちょっと費用が高めになりますが、使いやすいリフトです(図29)。特に四隅にやぐらを組む図のタイプはもっとも使いやすいリフトです。
ウ)床走行式リフト
昔から使われていたリフトです。移動可能なのでいろいろな場面で使えます
吊具には用途や身体機能に応じていろいろなタイプがあります。リフトの機種とは無関係に、一人ひとりにあった吊具を選び、使い方を学習しましょう。

介護保険ではベッドはレンタル対象品です。マットレスやベッド柵、移動用バー、ベッドサイドテーブル、移乗用のボードやシートなど関連する付属品もレンタル対象品です。
介護保険が利用できれば、レンタル料金総額の10%の自己負担で借りることができます。
障害者の制度では、「特殊寝台」として日常生活用具で給付されます。お住まいの地域によって給付金額が異なりますので、お近くの福祉事務所にご相談ください。
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やってはいけないこと 注意すること |
| その1 |
マットレスの上に布団を敷いてはいけません。しわになって褥瘡の原因になったり、背を上げたときに「ずっこけ姿勢」になる原因です。
マットレスだけでは寒いときは専用のオーバーレイ(上敷き)を使います。また、マットレスの硬さがあわないときも同様です。 |
| その2 |
ベッドの背上げ機能を利用したら、必ず介助動作が必要です。
起こしたときは骨盤をおこす介助を、寝かせたときは一度軽く側臥位にしましょう。 |
| その3 |
長いベッド柵を4本使いますと、囲まれてしまって出ることができません。また、ベッド柵は起きあがり時に手がかりにするものですから、頭側に利用することが原則です。 |
| その4 |
仙骨部(尾骨部)周辺に褥瘡があるときは背上げに気をつけます。
うっかりすると褥瘡のある部分に圧力を集中させてしまいます。 |
執筆者
市川 洌 (福祉技術研究所(株) 代表取締役)
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H.C.R. インターネット福祉機器情報サービス(http://www.hcr.or.jp/)上に掲載されている
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