はじめての福祉機器の選び方・使い方 入浴機器編
快適とともに安全に
入浴には大きな意味で、保清(身体の清潔)とリラックスという2つの目的があります。特に日本人は入浴好きといわれています。シャワー浴で済ます方々は少なく、大半の方が湯船につかると思われます。住宅改修のご相談で訪問させていただくときに週何回入浴されるかお聞きすると、ほとんどの方が毎日か1日おきとおっしゃいます。
しかし、入浴には危険性が伴っていることを忘れられがちです。ひとつには、ヒートショックと言われていることで、急激な温度差が身体に与える衝撃のことです。
入浴中の事故で死亡する人は交通事故での死亡より多く、年間1万人を超えるといわれています。快適であることとともに、安全に入浴できることもあわせて考えていくことが大切といえるでしょう。
生活の場所と浴室は近くに、暖かく
生活の場所と浴室とが同じ1階にあっても、浴室はトイレとともに北側に造られていることが多くなっています。トイレと浴室は同じ水回りであることと、生活する場所であるリビングや居室が日当たりのよい南側に建てることが多いためです。そのことで浴室は寒くなり、入浴するためにはあまり適切ではない配置となってしまっています。なかには玄関の脇に浴室があるお宅もあります。この場合、特に冬は玄関から直接冷たい空気が浴室・脱衣室に入り、寒暖差が大きくなってしまいます。できるだけ、浴室に入るために寒いところを通らなくて済むよう、生活の場所と浴室は近いほうがよいでしょう。
また、玄関から直接に冷たい空気が入ってこないような場所に浴室や脱衣室を造り、急激な温度変化がおきないよう脱衣室と浴室を暖めましょう。
浴室に行くまでの段差に気をつけましょう
日頃いる場所から浴室までの移動の動線はどうなっているでしょうか。おおむねドアがあり、そのドアには敷居や沓(くつ)ずりが2cm程度付いていて、廊下を通ってから脱衣室に入ることでしょう。この動線の段差もできるだけなくしたいものです。しかし、2cm以上の敷居に対して楔(くさび)形のスロープをつけることはあまりお勧めしません。勾配がつきすぎて、かえって乗り越えにくくなったり、乗り越えようとして踵がスロープについたときに滑ることがあります。
なお、車いすやシャワーキャリーで通るときには段差はなくしましょう。
脱衣室のスペースは広めに
脱衣室には洗面台を設置していることが多くあります。スペースが限られてしまうかもしれませんが、できれば、いすに腰掛けて衣服の着脱ができるぐらいの広さはほしいものです。介助する人のスペースも確保できるとよりよいでしょう。
どのようにして着脱衣しますか
着脱衣方法は、脱衣室で行うのが一般的です。立って着脱衣をする場合には手すりを付けておくのがよいでしょう。座って行うときは座位でのバランスを考慮し、バランスが悪ければ背もたれ付きや肘掛け付きのいすを選ぶとよいでしょう。
洗い場に家電製品を置かないように
浴室の中に洗濯機が置いてあるお宅がときどきありますが、動線の妨げとなったり漏電の恐れもあるため、家電製品はできるだけ浴室内に置かないようにしましょう。
浴室と脱衣室の段差はなくしましょう
浴室に入るときに、脱衣室と洗い場との段差は付きものでした。しかし今ではグレーチングで段差を解消する方法だけでなく、ユニットバスでも段差のほとんどないバリアフリータイプのものが開発されるようになってきました。すのこを敷いて段差を解消する方法もありますが、蛇口が低くなることがあるので注意しましょう。すのこの材質は、檜などの木製だけでなく樹脂製のものが一般的となり、以前に比べて腐らなくなりました。ただ、洗い場の掃除がしにくくなることや、すのこの下の汚れが気になることがあります。
洗い場は滑らないように
洗い場は濡れているので滑りやすく、段差の昇降を伴うとより危険性が増します。洗い場のタイルを滑りにくいタイプにしたり、ユニットバスでも水切りのよいものが開発されていますので、選択肢の中に入れてみるとよいでしょう。
段差がある所には手すりをつけましょう
洗い場に入るときや出るときなど、ドアの開閉に伴う段差の昇降時は手すりがあるほうがよいでしょう。
水栓金具は使いやすいものを
身体を洗うとき蛇口が回しにくくありませんか。回しにくいようでしたらレバー式の水栓金具がよいでしょう。シャワーにプッシュボタンが付いていて、水栓金具をいちいち操作しなくてもボタンで操作できるものもあります。介護するときも片手で操作でき、大変便利です。
身体を洗うときの福祉機器
身体を洗うときに立ちしゃがみが大変になっていませんか。シャワーいすに腰掛けて身体を洗うと、立ちしゃがみが楽になります。シャワーいすの高さによっては、つま先に手が届きにくくなりますが、その場合は10cmぐらいの小さい台に足を乗せると手が届きやすくなります。
浴槽への出入りはいろいろ方法があります
浴槽の出入りをするときは手すりに掴まるようにしましょう。浴槽への入り方は立って入る方法、座って入る方法、リフトで入る方法などがあります。立って入るときは浴槽に対して正面からまたぐ方法と横向きになってまたぐ方法があり、またぎ方によって手すりのつける場所が変わります。
座って入る方法は、シャワーいすや移乗台を浴槽の縁の高さにあわせて設置し、座ったまま身体を回転させてまたぐ方法やバスボードを浴槽の縁に渡しバスボードに腰掛けてから身体を回転させてまたぐ方法などがあります。
浴槽内で使用する福祉機器
浴槽内で立ちしゃがみをするとき足が滑ることがあれば、滑り止めマットを使いましょう。立ちしゃがみが大変なときは、浴槽の底に設置する浴槽台という福祉機器もあります。
身体の機能や場面に合わせて
脱衣室が寒い
| ヒートショックの原因にもなります。急激な温度差が身体に与える衝撃により心不全を起こしたりしないよう浴室内に暖房をつける方法や、脱衣室に床暖房を設置する方法があります。 |
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脱衣所での衣服の着脱が大変
| 脱衣室で衣服の着脱衣をするとき、立った状態で行うときには手すりを(a)、立位バランスが悪い場合には、いすに腰かけて行うと良いでしょう。(b) |
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浴室の出入りが大変
脱衣室から洗い場にかけて多くのお宅では10cm近くの段差があります(a)。洗い場にすのこを敷いて(b)段差を解消したり、脱衣室と洗い場の段差を最初から解消してある設計の浴室にすると(c)歩きやすく、また、将来的にシャワーキャリーを使うようになっても安心して浴室に入ることができます。ドアが開き戸だと出入りのときに回り込まなくてはならなくなり、特に介護者が付いて出入りするとき不自由になってしまいます。折れ戸か引き戸にすれば回りこまなくて出入りすることができるようになります。
洗い場での立ち座りが大変
洗い場で身体を洗うときに、立ち座りが大変になってきたらシャワーいすがあります(a)。座位バランスの状態によって背付きか背なし、肘掛け付きを使用し、身長や足の長さによって座面の高さを調節しましょう。方向転換が困難な場合は座面が回転するタイプのものもあります(b)。
浴室が滑りそうで怖い
洗い場は濡れると滑りやすくなってしまいます。段差の昇降を伴うとさらに危険が増してしまいます。段差を改修するとともに滑りにくいタイルにしたり、ユニットバスの場合は水切りの良いタイプにするとよいでしょう。
また、段差を解消するためにすのこを設置した場合、滑りにくい対応をしてあるものがありますので、すのこの材質にも注意したほうが良いでしょう。
浴室をまたぐのが大変
浴槽への入り方は立って入る方法、座って入る方法、リフトで入る方法などがあります。立っているときは浴槽に対して正面からまたぐ方法と横向きになってまたぐ方法がありますが、横手すりと縦手すりを設置すると安全にまたぐことができるでしょう(a)。
座って入る方法は、シャワーいすや移乗台を浴槽の縁の高さにあわせて設置し、座ったまま身体を回転させてまたぐ方法や、バスボードを浴槽の縁に渡し、バスボードに腰掛けてから身体を回転させてまたぐ方法などがあります。バスボードは取り外し式のものと跳ね上げ式のものがあります。特に一人でバスボードを使用する場合、跳ね上げ式のほうがはずしたり設置する手間がなく便利でしょう(b)。浴槽をまたいだり腰掛けて入る場合、浴槽の縁の高さは約400mmが良いでしょう。
浴槽から立ち上がるのが大変
| 浴槽内で座位姿勢を安定させるために手すりが付いている浴槽があります。その手すりにつかまって身体を前傾させてから壁についているL字の手すりにつかまり、お尻を浮かせて立ち上がると、安定して立ち上がることができます。 |
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水栓やシャワーがうまく使えない
水栓金具はレバー式のほうがひねることなく簡単にまわすことができます。しかし、人によっては温度調節と水量が一体となった三次元的な動きに慣れない方もいらっしゃいますので、できるだけ温度調節機能は別についた水量調節のみのものが良いでしょう(a)。シャワーも介助するとき片手で操作ができるようにシャワーヘッドにある手元のボタンでON、OFF操作ができるものがあります(b)。
浴室までの移動が大変
| 歩いて移動している方は、廊下の壁に横手すりを手首の高さ付近、肘が軽く曲がる高さに付けるとよいでしょう。ドアの沓(くつ)ずりなど段差がある場合、2cm以下の段差ならばスロープの設置をお勧めします。歩行だけでなく、シャワーキャリーや車いす移動のときにも段差を乗り越えることができます。しかし、車いす移動の場合は、沓ずりを撤去して段差を解消したり、床を嵩(かさ)上げして段差を解消したほうが簡単に移動することができ、段差を乗り越える衝撃がなくお勧めします。 |
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浴槽の形
浴槽の縁の高さは400mm程度が良いでしょう。深さは500mm、長さは内寸で900〜1000mm程度のものであればまたぎやすく、温まるときも足が浮かずに温まれて良いでしょう。浴槽の中に手すりが付いているものもあります。
| 床の材質 |
滑り止めマット |
すのこ |
| 滑りにくいタイルや、ユニットバスの場合水切りの良いタイプを選びましょう。 |
浴槽の中から立ち上がるとき滑らないようにするために、滑り止めマットを使うようにしましょう。吸盤タイプとそのまま置くタイプのものがあります。 |
腐らない樹脂製のものが多く開発されました。滑りにくいもの、クッション材が表面に使用されているものなどがあります。 |
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| シャワーチェア |
シャワーキャリー |
浴槽用手すり |
| 高さ調整付きのものが多くあります。背なしタイプ、背付きタイプ、肘掛付きタイプ、座面回転タイプ、肘掛跳ね上げタイプなどがあります。 |
シャワーチェアの足にキャスターが付いているものです。4輪キャスタータイプ、介護型車いすのように後輪が大きいもの、座面がソフトシートのもの、座面がU型もしくはO型のものなど多くの種類があります。 |
浴槽の縁に挟み込んで使用する手すりです。最近のものは手すりを付けたまま浴槽の蓋ができるタイプのものが多く出回っています。浴槽に対して横を向いてまたぐときに便利なものと、正面を向いてまたぐときに便利なものとがあります。 |
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バスボード
浴槽の縁にまたがせて、座った姿勢で浴槽の出入りをするためのボードです。浴槽の蓋のようにかぶせるタイプのものや跳ね上げタイプのものがあります。ボードが厚いと座ってまたぐとき浴槽の底に足が付かないで浮いてしまい、座位が不安定になってしまうことがあります。できれば薄いものの方がよいでしょう。ボードが重いと取り外しのとき介助者が苦労しますので、できるだけ軽いものの方が良いでしょう。ボードに腰掛けて浴槽の出入りをするとき、腰掛けてから臀部を横にずらして回転をして行いますので、滑りやすさと回転のしやすさも選ぶときのポイントになります。
バスリフト
浴槽の縁に取り付け、座面部分が上下に昇降するものです。なかには浴槽の中に置くタイプのものもあります。座面が上下に昇降するので立ちしゃがみが楽に行えるようになりますが、バスリフトへの移乗を介助で行うとき不安定になる場合や、座面が滑らずに移乗しにくいものがありますので注意してください。
浴槽台
浴槽の中に設置する腰掛け台です。吸盤式で浴槽に固定します。15cmから22cm位の高さのものが市販されています。高さ調整できるものもありますので、身体状況によって変更されると良いでしょう。高すぎると腰湯しかできなくなるので注意をしてください。
浴槽をまたぐときに浴槽台に足を乗せる場合は、浴槽の中に1段の段差ができますので、手すりなどにつかまって安定して段差の昇降ができる人がお使いになると良いでしょう。 |
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移乗台
浴槽の縁へ固定する腰掛け台で、身体を洗うときのシャワーいすにもなります。この移乗台に腰掛けて座ったまま回転して浴槽の中に入ります。移乗台が高すぎると、浴槽をまたぐときに足が浴槽の底に着かなくなり、座位が不安定になりますので注意をしましょう。
いずれのものも試用してから選ぶと良いと思います。 |
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つかまって歩ける方には手すりが有効
浴室の出入りのときに壁に縦手すりがあると、ドアの開閉を安定して行うことができます。縦手すりにつかまる位置は床上1000mmから1200mmのところにつかまることが多いので、その高さを中心として500mmから600mmの長さの手すりを付けるとよいでしょう(a)。
浴槽の出入りに付ける手すりは、横手すりと縦手すりがあります。横手すりは浴槽縁上200mmから300mmの高さに付けるとよいでしょう。縦手すりは長さが600mmあるとよいでしょう。縦手すりの位置は浴槽縁から100mm程洗い場に逃げたところに設置するとよいでしょう(b)。浴槽内の立ちしゃがみにはL字の手すりを浴槽の縁から100mm〜150mmの高さに付けるとよいでしょう(c)。
座って浴槽に入る方のための手すり
| 腰掛けて浴槽に入る場合は、浴槽の縁から洗い場に200mm程度離れたところに縦手すりを付けておくと、浴槽の縁に腰掛けたり立ち上がるときに有効です。浴槽の壁側にはL字の手すりを付けると回転して浴槽に入るときや浴槽内の立ちしゃがみを行うときに有効です。 |
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車いすやシャワーキャリーで入浴する方のための寸法 |
シャワーキャリーや車いすで浴室に入る場合はドアの開口幅が800mm以上あるとよいでしょう。できるだけ引き戸、それも三枚引き戸にしたいものです。
介護スペースも考えると浴室の広さは内寸で1600mm×1600mmのスペースが必要になります。
浴槽・流し台・水栓金具ばかりでなく、福祉機器は実際に使ってみないとわかりません。できるだけ業者にデモ機をお借りして確かめることをお勧めします。ショールーム訪問も欠かせません。ご自分の目で見て確かめてから購入や改修をすると良いでしょう。
介護保険では福祉用具購入費の支給があり、シャワーチェア・シャワーキャリー・浴槽用手すり・浴槽台・バスボード・移乗台・すのこの購入額が1年間に10万円までであれば9割戻ってきます(償還払い。自己負担1割)。
バスリフトは、月々1,500円から2,000円程度の自己負担でレンタルすることができます。住宅改修では手すり、床材変更、段差解消、ドア交換(開き戸から折れ戸もしくは引き戸への変更)などの工事が対象となります。すのこで段差解消をしたために水栓金具が低くて使いにくくなった場合は、付帯改修で水栓金具の位置変更ができます。
身体障害者福祉法による重度身体障害者(児)住宅設備改善費給付制度は、小規模改修(基準額200,000円)、中規模改修(基準額641,000円)、屋内移動設備(基準額:機器本体979,000円、設置費353,000円)に分かれます。小規模改修の対象者は6歳以上65歳未満で、下肢もしくは体幹に係る障害の程度が3級以上の者または補装具として車いすの交付を受けた内部障害者。
ただし、特殊便器への取替えについては上肢障害2級以上の者です。中規模改修の対象者は、6歳以上65歳未満で、下肢もしくは体幹に係る障害の程度が2級以上の者、または補装具として車いすの交付を受けた内部障害者です。屋内移動設備の対象者は、6歳以上で、歩行ができない状態で、上肢、下肢もしくは体幹に係る障害の程度が1級の者または補装具として車いすの交付を受けた内部障害者です。
執筆者
加島 守 (武蔵野市立高齢者総合センター 主任理学療法士)
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H.C.R. インターネット福祉機器情報サービス(http://www.hcr.or.jp/)上に掲載されている
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