はじめての福祉機器の選び方・使い方 トイレ・排泄用品編
排泄は障害の有無や年齢に関係なく、生まれてから死ぬまで日常生活の中で繰り返し行われている行為です。誰もが「シモの世話にはならずに人生を全うしたい」と考えています。こんな言葉に表されるように、排泄に対する気持ちはとてもデリケートなものです。日常生活でなんらかのケアを受ける方の、これまでの人生観がもっとも表現される事柄でしょう。
正常な排泄とは、
ア)尿や便を作るメカニズムに異常がないこと
イ)作られた尿や便をしっかり溜めて、気持ちよく出し切るための臓器と脳の機能に異常がないこと
ウ)連続した動作によって排泄行為が成り立っているため、運動機能に異常がないことが必要となります。
この3つの機能に異常がなければ、排泄行為を他の方に助けをかりることなく行えます。1つでもできなくなったり、機能が低下したりすると排泄障害が引き起こされ、日常生活に大きな問題を起こすことになります。
排泄障害の改善方法は症状により様々です。
- 筋肉(身体の底をハンモックのように支えて臓器を落ちないようにしたり、尿道や肛門を締める骨盤底筋)のトレーニングによって改善を望めるタイプ<腹圧性失禁>
- 薬剤や医療的な処置、治療によって改善を望めるタイプ<切迫性や溢流性失禁>
- 膀胱や尿道、直腸や肛門に異常がないのに、麻痺があってスムーズに歩くことができず間に合わず失敗したり、トイレの認知ができずにトイレ以外の場所で排泄してしまうようなタイプ<機能性失禁>
漏れがある方や、トイレに行く回数が多い方に対して、簡単に用具を選択してしまうと廃用性(身体を動かさなくなることによって起こる心身機能の低下。廃用症候群)の問題を引き起こし、本人及び家族、介護者の生活の質を脅かしかねません。
まずは、どのような症状で困っているのか、どうしたいと思っているのか、用具の選択が最善の方法なのかを排泄ケアに知識のある専門職に相談することをお勧めします。
用具によって問題が改善できる排泄障害のタイプは、機能性失禁が中心となります。
排泄関連用品は、数千種類あるといわれています。おおまかな分類をするために、ADL(日常生活動作)から見た排泄用具の選択チャートを示します。
チャートにあるポータブルトイレ、補高便座、腰掛け式便器、収尿器は介護保険で特定福祉用具として購入費の支給対象となる物がほとんどです。ここでは、非常によく選択されるポータブルトイレ、尿器、おむつの選び方、使い方の注意点を挙げたいと思います。

ポータブルトイレ
寝たきりにならないための有効な道具として、最初にポータブルトイレの導入が検討されることが多いようです。しかし、ポータブルトイレが自力で使えるということは、通常のトイレが使えるケースが多くあります。ポータブルトイレを導入する時は、下表のようなその他の支援方法も考え、通常のトイレを利用できないかをまずは考えてみてください。
使用される方に合わないポータブルトイレですと、居室スペースが無駄になってしまったり、移動の動線を阻害したり、経済的な損失にもなったりします。一度購入してしまうと交換ができませんので、購入前に適合するのかを見極める必要性があります。
ポータブルトイレの種類と特徴
| 標準型(プラスチック製) |
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利点
軽量で移動させやすい。
掃除がしやすい。
欠点
蹴込みのスペースがないので立ち上がりにくい。
軽量のため不安定感がある。
適応
立ち座りが容易にできる人。
不適応
座位バランスが悪い人。
使用上の注意
高い身体機能が必要になる。
高さ調節や立ち上がりの補助にはトイレ枠などが必要になる。 |
| 木製いす型 |
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利点
重量があり安定している。
見た目が居室にマッチする。
欠点
広めの設置スペースが必要。
重いので移動させにくい。掃除に気を遣う。
座面が硬い物が多い。
適応
立ち座りの動作が比較的難しい人でも使用可能。
不適応
特になし。
使用上の注意
メンテナンスを行う介護者がいない場合、他の材質より傷みが早い。 |
| 金属製コモード型 |
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利点
座面の高さ調節が簡単にできる。立ち上がりやすい。左右両方のアームが稼動する。
掃除がしやすい。
座面より脚部の基底面のほうが広いため、安定している。
安定している。
持ち運びが容易。
欠点
見た目が居室にマッチしない。
適応
端座位の取れる人であれば、横移乗によって使用可能。
不適応
特になし。
使用上の注意
特になし。 |
| スチール製ベッドサイド設置型 |
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利点
ベッドサイドに設置して、横移乗で使用できる。
欠点
重量があるため、移動のためのキャスターはついているが、細かい動きはできない。
トイレからベッド以外への移乗はできにくい。
適応
端座位の取れる人であれば、横移乗によって使用可能。
不適応
特になし。
使用上の注意
設置する時、マットと座面の高さをそろえる。
アームの短い方をベッド側にする。 |
立ち上がり時の蹴込みについて
人の立ち上がりは、イラストのような身体の動きをします。〈図-1〉
蹴込みスペースのないポータブルトイレを、身体機能の低下した方が使おうとする時、身体を前に引き出し、蹴込みスペースを作り、頭の重さで立ち上がりをします〈図-2(b)〉。軽量タイプのポータブルトイレでは、このように立ち上がりますと、トイレ自体が前に倒れてくることがあり、危険な場合があります。〈図-2(c)〉

尿器・便器
排尿は1日に通常6〜8回、多い方ですと10回以上の場合もあります。あまり長時間にわたって排尿を待ってもらうこともできにくいものです。また、排尿の度、トイレへ要介護者にともなって行くことが介護者にとって大きな負担となることさえあります。
要介護者本人の安全性と介護負担の軽減をともに重視しなければならない場合、ベッドサイドで尿器を使っての排尿を行うことも一つの手段として知っておいたほうがよいと思います。
尿器、便器の種類と特徴
| 尿器 |
しびん |
受尿、蓄尿部別体タイプ |
自動吸引タイプ (特殊尿器) |
座位用タイプ |
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| 利点 |
介護者が扱いやすい。受け口が広い。
座位でも立位でも使用できる。
掃除が簡単。 |
すぐに処理をしなくてもよい。寝たきりの人でも自分で使用することができる。 |
自動に吸引するので受尿部と蓄尿部の高低差を必要としない。尿がタンクに密閉されるので臭気が少ない。 |
幅が狭く、高さも低いため座位のまま差し込める。 |
| 欠点 |
すぐに処理を必要とする。 当てっぱなしはできない。 |
使用に際して訓練が必要。ホースが汚れやすく掃除が困難。受尿部と蓄尿部の高低差が必要。
(布団での使用は困難) 女性の場合、仰臥位で使いにくい。 |
音がうるさい。
使用に際して訓練が必要。
掃除が難しい。 |
男性の使用は難しい場合が多い。 |
| 適応 |
排尿後すぐに処理ができる場合。
尿意を訴えることができる人。
排尿時間のコントロールがとれているがトイレまでいけない人。 |
排尿後すぐ処理できないが、自分で受尿部をあてることができる人。尿意がはっきりしている人。 |
すぐに処理を必要としない人。 |
座位のとれる人。 |
| 不適応 |
尿意がない人。
長時間当てていなければならない人。 |
尿意のない人。
女性の場合座位での使用。 |
aの場合、自分であてることができないか、尿を訴えることができない人。 |
寝たきりの人。 |
| 使用上の注意 |
性差によって受け口の形が違うが、男性でも陰茎の短い人は、女性用のほうが使用しやすい。
素材によって重さなど違うので、それぞれの特徴を知る必要がある。 |
失敗なく使用するためには訓練が必要。
衣類を工夫することによって寝たきりの人でも自立ができる。 |
aは手持ち式のタイプで衣類の工夫があれば女性が座位状態でも使用することができる。
bは装着型で、便のコントロールがついていればほとんど臀部陰部を汚さない。 |
座位用には3種類のタイプがあり、それぞれの使い勝手や収尿量が違う。できれば試用をしてみる。 |
| 尿・便器 |
腰上げ不要タイプ |
ベッドパンタイプ |
ゴム製タイプ |
小型差し込みタイプ |
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| 利点 |
仰臥位のまま全く臀部を上げずに差し込むことができる。尿便ともに採取できる。おむつを使用すると、排便時背中に汚れが広がってしまうような方に有効。 |
広い面積で採取できる。 消毒がしやすい。 陰部洗浄時の汚水受けにも使用できる。 |
体圧を分散させるので痛みが少ない。 |
プラスチック製なので軽い。 |
| 欠点 |
差し込みや、抜き出しを行う介護者はコツを必要とする。 |
重い。腰上げができない人には、使用が困難。 |
メンテナンスや保管に注意が必要。 |
差し込むと腰部が反るような感じの違和感がある。 |
| 適応 |
臀部を上げることを制限されていたり、機能低下によりできない方。 |
太った方。尿や便の量が多い人。腰上げができる人。 |
座位がとれず仙骨部の褥瘡などで圧迫できない人。 |
比較的身体の小さい人。 |
| 不適応 |
動ける人。 |
褥瘡のある人。 |
動ける人。 |
褥瘡のある人。 |
| 使用上の注意 |
差し込み時は便器をマットに押し付けるように挿入し、抜く場合も排泄物が波打って飛び出さないようマットを押し付けるようにしながら、水平にゆっくり引き出す。 |
重いので介護者に力がない場合は使用困難。 |
ゴムチューブ状の便器本体を空気で膨らませて使用する。 |
小型のため臀部が汚れやすいので、あらかじめ便器内に紙を敷いておくなど尿の跳ね返りを予防する。 |
尿器をベッド上にて自分で使用できる方の場合、使用後に尿が容器内に入っている重さを保持しながら、ベッドサイドに持ってくることが可能かの確認も必要です。使用後の重さを保持できずにベッド上を汚してしまっては、本人も介護者も疲れてしまいます。多少斜めにしてもこぼさないために逆流防止弁付きの尿器を選択したり、尿器内にポリマーを入れておいて瞬時に固まらせてしまうという方法もあります。

おむつ・パッド
おむつは、自分でできる動作がほとんどない寝たきりの方や尿意のない方、トイレに間に合わずに漏れる量の多い方などへの使用を考えます。
その時大切なことは、本人の不快感をできるだけ少なくする、寝たきりの状態であっても自尊心を傷つけない配慮、介護者の負担を少なくすることです。パッドの吸収量は多様です。漏れ量に合わせたパッドを選択することで安心して外出ができたり、おむつの中に併用することによって経済的になったり、交換が楽にできたりします。
おむつ、パッド双方とも、材質が紙製と布製になります。紙製品は使い捨てで、布製品は洗濯によって再利用可能です。テープタイプとパンツタイプのおむつ以外は用品を固定するためのカバーやサポーターの使用が必要になります。
紙のおむつやパッドなど使い捨て用品は、必ずサンプルで試用してから購入する必要があり、その選択については、1回の失禁量(排泄量)を知ることで適切な製品選択が可能です。
おむつ・パッドの種類とその特徴
| おむつ |
テープタイプ |
フラットタイプ |
ひょうたんタイプ |
パンツタイプ |
敷くおむつ |
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| 利点 |
吸収量が多い。
おむつカバーがいらない。
種類が多い。 |
鼠頸部がやせていても形を整えやすい。敷いて使用することもできる。大きさの割に単価が安い。 |
鼠頸部に沿うのでフィット感がある。 |
普通のパンツのようにはくことができ、装着が簡単。 |
おむつの使用が困難な人が腰に巻いたり寝具上に敷いたりして使用できる。防水シーツの代わりとしても使用できる。 |
| 欠点 |
単価が高い。蒸れやすい。かぶれることもある。 |
大きさの割に吸収量が少ない物が多い。あて方に訓練が必要。 |
鼠頸部がやせていると合わないので横漏れの原因になる。あて方に慣れが必要。 |
寝たまま使用すると横漏れを起こすことが多い。汚れた場合簡単に破いて脱ぐことはできるが、履く際、ズボン類は脱いでからでないと装着できない。 |
大きなゴミとなる。 |
| 適応 |
長時間交換できない場合。濡れ量が多い人。寝たきりの人。 |
寝たきりの人。 |
鼠頸部がやせていない人。 |
トイレ動作はできるが時間がかかって間に合わない人。 |
パンツをはく習慣のない人。股関節の開閉が困難な人。痴呆などで身体に巻くものは嫌がる人。 |
| 不適応 |
漏れ量の少ない人。活動的な人。 |
活動的な人。 |
鼠頸部がやせてる人。 |
寝たきりの人。 |
特になし。 |
使用上 の注意 |
パルプアレルギーのある人はひどくかぶれるので注意する。
パッケージにあるあて方を確認してから使用する。 |
おむつがカップ状になるように吸収面を内側に2つ折りにしてからあてる。おむつカバーを併用する。 |
おむつカバーやサポーターとの併用をする。
カップ状に成形してからあてる。 |
はいていると非常に温かい。夏場は薄手のタイプを使用しないと蒸れる。 |
横漏れによってシーツなどの洗濯に疲れている場合は、有効に使用できる。 |
| パッド |
男性用 |
フラットタイプ |
コンパクトタイプ |
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| 利点 |
男性の場合、尿道口からずれなければ、広い汚染を予防することができる。 |
一度吸収すると、肌戻り感が少ない。 |
携帯に便利。生理ナプキンと同じ感覚で使用できる。 |
| 欠点 |
陰茎がパッドからずれてしまうことも多い。 |
横漏れ防止のギャザーがないので、漏れの勢いがあると少量でも横漏れする。 |
単価が高い。 |
| 適応 |
あまり活動的でなく、陰茎の長さがある程度ある人。 |
だらだら漏れる人。 |
活動的な人。 |
| 不適応 |
陰茎が萎縮していたり陥没していたりする人は女性用を使用するほうがよい場合もある。 |
漏れ量の多い人。 |
漏れ量の多い人。 |
使用上 の注意 |
成形されているタイプと形を作ってテープ止めするタイプがある。固定の為の専用カバーが必要な用品もあるので注意する。 |
固定するパンツやサポータと併用する。 |
固定するパンツやサポーターと併用する。様々な吸収量の用品があるため、自分に合った漏れ量のものを選択する。 |
| パッド |
多吸収タイプ |
T字タイプ |
失禁パンツ |
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| 利点 |
男女共に使用できる。便をとることもできる。おむつ使用者のサブパッドとしても使用できる。サブパッド使用で経済的になる。 |
ベルト付きなのでそのまま使用できる。下着感覚。ベルトは再利用できる。アウターにひびかない。汚れてもズボン類を脱がずに交換できる。 |
外見が普通の下着と変わらない。 再利用型なので経済的。 |
| 欠点 |
厚さのあるものや大きいものが多い。 |
非常に太った方や、逆にやせた方はゴムのベルトの調整が必要。 |
漏れ量による調節はできない。 |
| 適応 |
漏れ量の多い人。 |
活動的な人。 |
パッドを使いたくない人。 少量の漏れの人。 |
| 不適応 |
あまり活動的でない人。 |
汚れた場合、長時間交換できない人は横漏れを起こしやすい。 |
50ml以上の漏れの人。 |
使用上 の注意 |
吸収量が多いので活動中に使用する場合には、かなりきつめのサポーターが必要になる。 |
ゴムベルトの固定の圧迫によってかぶれる場合があるので注意する。 |
股間部に吸収素材に縫いこんであるものや、パッドを差し込んで使う物などがある。用品の特徴を確認してから使用する。 |
介護力のある時間帯とない時間帯で使用する製品を変更することによって、ご本人も介護者も楽に生活することができるでしょう。
常時おむつ使用が必要な場合、おむつ代は税金の控除対象となりますので制度の活用も知っておきましょう。介護保険の中では、市区町村の単独施策として、様々な補助がある場合が多いです。ご本人の居住地の窓口にて確認してください。
排泄用品を選択するにあたっては、病院や施設、家庭においてご本人の身体面・精神面・排泄状態・失禁状態・生活面などの観察を十分にし、把握する必要性の高いことを忘れないようにしていただきたいと思います。
執筆者
牧野 美奈子 (コンチネンスジャパン(株) 教育ビジネス主任/日本コンチネンス協会)
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H.C.R. インターネット福祉機器情報サービス(http://www.hcr.or.jp/)上に掲載されている
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