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第2回 消毒液

コロナ禍におけるアクセシブルな製品・サービス

 [オンラインイベント「福祉機器Web2020」における特別企画によせて]
 新型コロナウィルスの感染拡大は、日本を含む世界中の「人たち」に生活様式の変更を迫り、それに伴い製品、サービス、システムも変更が必要になっています。
 世界中の「人たち」には、国際福祉機器展H.C.R.で紹介される製品やサービスなどの対象者である高齢者・障害のある人たちも当然含まれています。けれども、製品・サービス・システムがコロナ禍で変更される際に、高齢者・障害のある人たちを考慮した配慮は、なされない場合が多く見受けられます。また、高齢者・障害のある人たちへの配慮がされた製品・サービスも、当事者や関係者に情報として届いていない場合も多く見受けられます。
 コロナ禍で国際福祉機器展H.C.R.は本年、中止となってしまいましたが、今般、その主催者である一般財団法人 保健福祉広報協会が運営するH.C.R.Webサイトで開催されるオンラインイベント「福祉機器Web2020」において、「コロナ禍におけるアクセシブルな製品・サービス」の特別企画コーナーを設置することとなりました。本コーナーでは、毎回、さまざまなテーマを設け、紹介していきます。

 クリニック、歯科医をはじめ、書店、古書店、百貨店、スーパーマーケット、食堂、レストラン、衣料品店、遊園地、これらは、最近行ったなかで、入り口に「消毒液」が置いてあったのを思い出しながら書いた場所です。
 マスク不足が一段落すると、街に出ていく時にはマスクをするのはあたりまえとなり、使い捨てマスクだけではなく、何度も洗えるタイプのマスクが製品として出回り、自分の個性を表現することもできるようになってきました。
 マスクのように個性を発揮するわけではありませんが、各所の入り口にある「消毒液」の容器は、操作方法の変化がおこってきました。コロナ禍の初期には、各施設とも出入口に消毒液を置く台を設置し、そこに置いてあるのは、ポンプの上部を片手で押し、ノズルから噴射してくる液をもう片方の手で受け止め、その液をもう片方の手と共に手のひらと甲に広げて、消毒完了となるものであり、それを経て、それぞれの目的で中に入っていくことになっていました。

通常のポンプ式消毒液

 

 この消毒液は、障害のない人たちにとっては特に不便を感じることはないので、コロナ禍の初めのころには、「あ~こういうものか」で生活の中に溶け込んでいきました。けれどもしばらくすると、消毒液はテーブルから離れ、一本のスタンドの上にちょこんとおさまり、今まで片手で押していたあのポンプの上には、下から伸びたものが覆いかぶさり始めました。よく見ると、一本のスタンドの下にはドラムを足でたたく時のペダルがあり、「足で押すと消毒液が出ます」といった説明が書かれています。

足ふみ式消毒液

 

 手で触れての感染を考慮して考えられた(と思われる)足ふみ式消毒液は、開発者の意図どおりと解釈した人がほとんどと思いますが、手が不自由な人に便利、と思った人もいたのではないかと思います。私もその一人ですが、片まひのある知人に聞くと、「便利に使える人もいると思うが、自分は動く方の足でペダルを押すと重心がとれなくなってしまう」とのこと、なるほどそう簡単に誰もが使えるものにはならない、と思った次第です。
 その後、横浜中華街の大きめの中華料理店に行く機会があり、そこにも自立した消毒液が2台置いてありました。一台は、今紹介した足踏みタイプ、そしてもう一台は自動式と書かれてあり、液が出てくる場所に手をかざすと「シュッ」という音と共に、霧吹き状の消毒液が手にかかってきたのです。

自動で、消毒液が出ます

 

 この店のトイレにあるごみ箱も、手をかざすと蓋が開くタイプものがコロナ禍以前から設置され、さらには洗面台も、左側に手をかざすと泡石鹸、真ん中はお湯、そして右側にかざすと、温風がでてくる仕組みになっており、当時は、ここまでする必要があるのか疑問でしたが、この状況下では貴重な工夫です。

手をかざすと蓋があくゴミ箱
自動で石けん、手洗い、乾燥が

 

 その自動式消毒液のポンプ、最近では安価のものも出始め、多くの場所で見かけます。
 先ほど「足で押すタイプは使えない」といっていた友人も、初めて使った時、「この自動式は使える!」と感動したと言っています。
 さらに最近では、自動の消毒液ポンプの上にカメラ付きのモニターが付き、モニターの正面に立つと自動的に検温がされ、37度を超えていると担当係に連絡がいくようなシステムのものも発売されているようです。
 新型コロナウィルスの脅威は、障害の有無に関わらず襲いかかってきていますが、その対策には多くの知恵が必要です。その知恵は、障害のある人のことを決して忘れることなく出していくことが必要であると、コロナ禍以前よりも強く感じます。今回ご紹介した消毒液も、誰もが使えるものを目指しながらも、叶わなければ、複数の仕様で対応することが必要だと思います。

自動の消毒液