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第3回 インターホン

コロナ禍におけるアクセシブルな製品・サービス

 [オンラインイベント「福祉機器Web2020」における特別企画によせて]
 新型コロナウィルスの感染拡大は、日本を含む世界中の「人たち」に生活様式の変更を迫り、それに伴い製品、サービス、システムも変更が必要になっています。
 世界中の「人たち」には、国際福祉機器展H.C.R.で紹介される製品やサービスなどの対象者である高齢者・障害のある人たちも当然含まれています。けれども、製品・サービス・システムがコロナ禍で変更される際に、高齢者・障害のある人たちを考慮した配慮は、なされない場合が多く見受けられます。また、高齢者・障害のある人たちへの配慮がされた製品・サービスも、当事者や関係者に情報として届いていない場合も多く見受けられます。
 コロナ禍で国際福祉機器展H.C.R.は本年、中止となってしまいましたが、今般、その主催者である一般財団法人 保健福祉広報協会が運営するH.C.R.Webサイトで開催されるオンラインイベント「福祉機器Web2020」において、「コロナ禍におけるアクセシブルな製品・サービス」の特別企画コーナーを設置することとなりました。本コーナーでは、毎回、さまざまなテーマを設け、紹介していきます。

[1]使用頻度の変化

 コロナ禍で多くの人の生活で変化したことの一つが、玄関先と室内に訪問者を知らせるインターホンの使用頻度の増加です。感染を防ぐため外出が減り、その結果、買い物や外食の回数が減りました。外出しての買い物はネットでの注文に変わり、外食も自宅まで届けてもらうデリバリーに変わっていきました。
 コロナ禍以前、毎日配達されるものといえば、朝夕の新聞、そしてひと昔前までは瓶の牛乳が頭に浮かびます。その二つは、自宅のポストや専用の牛乳受けに配達されているので、今回のテーマである「インターホン」が使われることは、月一度の集金以外には基本的にはありません。けれどもここ10年ほど前から、本、生活用品などが、ネット通販で容易に購入できるようになってからは、「インターホン」を使用される回数が格段に増えてきました。
 そしてこのコロナ禍においては、日用品、食材だけではなく食事の配達も急激に増えました。そして「インターホン」もさらに多くの回数、使われているのです。

[2]インターホン

 広辞苑で「インターホン」をひくと、「機内、家庭内などの有線装置。建物・家庭・列車・船の中などで内部連絡用として使用される。」とでてきます。ご存知のように住宅用のインターホンは、玄関の外に設置する玄関子機と、家の中に設置する親機とで構成されています。
 一般社団法人インターホン工業会によると、インターホンは、玄関先以外にも、コインパーキング、病院や介護施設のナースコール、ドライブスルー式のファストフード店、マンションのオートロック、エレベーター内の緊急連絡ボタン、駅構内の車いす対応エスカレーターや階段昇降機などにも多数利用されていると紹介されており、多くの人にとって身近な機器であることが分かります。
 特徴は、ブザーや呼び鈴と違い、相手を呼び出すだけでなく音声通話ができること、それにモニターテレビがついているタイプでは、家の中にいながらにして、来訪者の顔を確認しながら会話を行うことができます。その画像を録画するタイプのものは、防犯にも役立っているのです。さらにガス漏れ警報器、熱感知器、煙感知器等と連動させると、危険が起こると親機や子機からアラーム音やメッセージが発せられ、危険をいち早く知ることができます。

[3]コロナ禍でのインターホン

 12年前、脳出血が原因で左半身の片麻痺になったAさん(60代)は、大手メーカーで、数々のヒット商品をいくつも世に送りだす商品の開発マンでした。クヨクヨしていてもしかたがないと気持ちを切り替え、片麻痺になって不便になったことに一つひとつ向きあい、片手での歯磨き、牛乳紙パックや納豆容器の蓋開けについて、それらのコツをいろいろと編み出しました。さらにネットで探すと、「スマホを置くだけで充電できる」、「片手で開閉できる傘」、「片手で使えるペットボトルキャップ」など多くの便利製品が見つかったのです。嬉しくなってさっそくネット販売で注文し配達されるのを待つばかりとなりました。2日後、「ピンポ~ン」と鳴り急いで居間から8メートルの玄関へ・・・のつもりが、片マヒの足では時間がかかり、辿り着いた時には既に宅配便の人影はなく不在の連絡票がポストに入っていました。テレビや新聞では、時間指定でも不在の人が多く、宅配便の再配が増え、大きな問題になっていることも伝えています。
 そんなことが数回あり、何とか解決策はないかと再度ネットで調べて見つけたのは、来訪者がインターホンを押した際、持ち運び可能な子機を使って、来訪者と会話ができるという優れものでした。さっそく注文し設置してもらいました。設置後、はじめての宅配ではピンポンと手元で鳴った子機に「少し時間がかかりますので待っていてください」と伝えることができ、それ以降、自宅にいるときに、宅配便の人を返してしまうことはなくなったとのこと。
 私が所属する共用品推進機構が、以前行った「耳の不自由な人たちへの日常生活における不便さ調査」でも以前、一番ほしいモノとして、誰が訪ねてきたのかがわかるモノがほしいという回答が多くあがりました。Aさんが購入したインターホンは、スマートフォンでも応答することができるタイプもあります。そのため、ドアホンのチャイムが押されると、スマートフォンが振動し、耳の不自由な人が来訪者を確認することができるのです。
   コロナ禍の状況で、障害の有無に関わらず、多くの場面でインターホンは活躍しています。

子機で応答できるインターホン