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福祉施設の実践事例

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メンタルコミットロボット 【PARO】の更なる可能性について

障害者支援施設での 活用方法と利用者の変化
種別障害者施設
開催年2017
テーマ介護ロボット・福祉機器
介護ロボット
メンタルコミットロボット 【PARO】の更なる可能性について

社会福祉法人 芳香会

障害者支援施設「青嵐荘療護園」

障害者支援施設「青嵐荘蕗のとう舎」

「PARO」の可能性を探る

「PARO」は、人工知能やセンサーを搭載したアザラシ型ロボットです。2002年には、世界で最もセラピー効果があるロボットとしてギネス記録に認定されました。今回は、当法人の障害者支援施設「青嵐荘蕗のとう舎」と「青嵐荘療護園」で、このPAROを活用して行ったデータ収集や効果測定についてご紹介いたします。2つの施設でPAROを導入するきっかけとなったのは、利用者の重度化による活動量の減少です。これまで行っていた日中活動への参加が難しくなり、参加意欲そのものが低下する方が増えていました。こうした方たちにPAROの使用により、癒しや楽しみを感じていただき、笑顔や前向きな気持ちを引き出したいと考えたのです。そこで、2つの施設でデータ収集と効果測定を行うことにしました。はじめに、青嵐荘蕗のとう舎での取り組みをご紹介します。対象者として、生活全般、あるいは活動への意欲が低下している方、感情の起伏が激しい方、自分の思いを表現することが不得手な方など5名を選出しました。そのうち、高齢のA様、B様、C様は、平日午後の活動の一つとして、1回20~30分、PAROと過ごす時間を設定しました。D様、E様は、活動に対して意欲が低下しているときにPAROを使用し、活動参加を促しました。このとき、単にPAROを渡すだけではなく、職員がPAROを介したコミュニケーションを図ることがポイントです。そのうえで、利用者がPAROを使用しているときの表情や発言などを観察して評価していきます。それでは、具体的な評価をご紹介します。
【A様の場合】
9回目までは、警戒心のためか体をのけぞらせ、顔も背けるなどしていましたが、10回目からは少しPAROに触れることができました。しかし、笑顔が見られるなどの変化はありませんでした。
【B様の場合】
気分が落ち着いているときにPAROを渡すと、しっかりと抱きかかえて穏やかな表情を見せることが多くなりました。しかし、感情の起伏の激しさに変化は見られませんでした。
【C様の場合】
初回からPAROに対する反応がよく、笑顔で優しく接していました。話しかけたり鼻歌を歌ったりと、PAROの面倒を見ることに楽しさを感じているようでした。職員からも「こんなに笑っているのは初めて」との感想が聞かれました。
【D様、E様の場合】
活動に対する参加意欲の低下から、移動に時間がかかっていました。しかし、PAROを使用することで気持ちの切り替えがうまくいくのか、短時間で移動できるようになりました。PAROをしっかりと抱きかかえ、優しい表情で見つめていることが多く、関わりを楽しんでいる様子でした。これらの評価を、資料①にまとめました。活動への意欲が低下し、「行きたくない」「やりたくない」といったマイナスの感情を持っている利用者も、PAROが介在することで「PAROと一緒に行ってみよう」との、プラスの感情に変わりやすいことが分かりました。前向きな気持ちが生まれたことで、活動参加までの時間短縮につながりました。また、楽しい気持ちで活動に参加することができ、意欲の向上につなぐことができたと考えています。さらに、PAROを使用することで、職員から利用者への一方向的な働きかけでなく、利用者から職員に対して関わりを持とうとする姿が見られるようになりました。これにより、コミュニケーションの幅が広がったと考えています。

資料①

PAROの使用と ストレスとの関係を測定

次に、青嵐荘療護園での活動についてご紹介いたします。対象者として、落ち込みやすい方、活動への参加意欲が低下している方、不安定になりやすい方など4名を選出しました。実施するのは、毎週月曜と水曜の14時~15時で、当園で「スヌーズレン活動」と呼ぶ、癒しの時間帯です。対象者1名につき5~10分程度、PAROを使用します。評価方法は、利用者の表情や発言を観察することに加え、ニプロ株式会社が製造した「唾液アミラーゼモニター」を使用し、ストレスの度合いを測定することにしました。資料②は、4名の対象者について、PARO使用前後のアミラーゼ値の変化を表にしたものです。F様とG様のアミラーゼ値は、PARO使用前よりも使用後の方が減少しましたが、H様とI様はPARO使用後の値が上昇しています。このことから、PAROを使用することにより、ストレスにも少なからず関係しているのではないかと考えられます。資料③は、PAROを使用した対象者の様子をまとめたものです。笑顔になる方や、他の活動への参加状況に変化が見られた方もいましたが、特に変化が見られない方もいました。資料④は、PAROを使用した対象者の変化をまとめたものです。PAROを使用することで、利用者の表情が柔らかくなったり、気持ちの切り替えがうまくできたりすることが分かりました。また、PAROそのものとの関わりを楽しむだけでなく、職員とのコミュニケーションも楽しんでいるように感じられました。さらに、唾液アミラーゼ値に変化が見られたことから、ストレスにも少なからず関係していると考えられます。対象者のストレスは増減に違いがありましたが、変化の少ない日常生活に何らかの刺激を生じることができたのではないかと考えています。今後もPAROを使用することで、利用者に対する理解を深め、職員がコミュニケーション力を付けることで、よりスムーズな活動につなげることができると考えています。引き続き、PAROを活用した可能性を探っていきたいと思います

資料②

資料③

資料④