文字サイズ

福祉施設の実践事例

実践事例 詳細

リフト導入による利用者の安心・安全な支援の実現

種別障害者施設
開催年2018
テーマ介護ロボット・福祉機器
介護ロボット
リフト導入による利用者の安心・安全な支援の実現

社会福祉法人 まりも会
清瀬療護園

まりも会 清瀬療護園の概要

当施設は、昭和51年4月、都内で2番目の重度身体障害者療護施設を、都立民営で東京都清瀬市に開所しました。その後、昭和50年代後半には、施設の共用部のトイレに初めて移乗用リフトを設置しました。まだ、福祉の世界に移乗用のリフトが出始めたばかりのころでした。平成24年には、東京都より民間委譲を受けて自主運営を開始。平成29年4月、老朽化に伴い建て替えを行い、現在は新しい施設で運営しています。 建物は鉄筋コンクリート3階建て、ユニット方式を採用しています。68床が全室個室で、施設入所が60名、生活介護が70名、短期入所ショートステイは8床です。そのうち1床は緊急一時保護用となっています。看護師が24時間在住しており、診療所のドクターは月~金曜日の時間勤務です。その他、浴室4か所、活動室、リハビリ室、スヌーズレン室、さらに一般の方にも来訪してもらえる本格的な喫茶店などを併設しています。

リフト普及への取り組み

当施設は、二十数年前から徐々にリフトの導入を進めてきました。平成29年に建て替える時点で、すでに54機の移乗用リフトがありました。しかし、当時は全てのリフトが稼働していたわけではありません。使用は職員の裁量や利用者の判断に委ねられており、「抱えない介護を全施設で目指そう」との取り組みが一切なかったため、結果的にパワー介護が横行していました。しかし、建て替えの節目を迎えたことで、抱えない介護を目指す機運が一気に高まり、移乗を行うであろう全てのエリアでリフトを導入することになったのです。そして、建て替え後の新施設には全エリアに77機のリフトを導入しました。 資料①、②、③が、当施設で導入したリフトです。デンマークのグルドマン社製です。全居室に自在なXYレールを配置し、浴室・診察室・リハビリ室・スヌーズレン室など移乗が考えられる全てのエリアにリフトを配置しています。スリングシートのサイズは、後ほど説明する18名の「リフトインストラクター」「リフトリーダー」を中心に選定を行い、既存のスリングシートでは吊り上げが困難な場合などはPTや販売員の指導を受けています。

資料①

資料②

資料③

リフトの普及に必要な要素の1つが、施設長や法人全体の理解です。設置にはそれなりの予算が必要になるため、管理者側の理解が大きく寄与します。そこで、当該施設における腰痛などの発生状況や、腰痛を理由に離職した職員の把握が必要です。また、利用者の離床状況、生活の質の向上を常に目指すことも、リフト導入につながると考えられます。しかし、私たちの旧施設では「リフトを設置しながら使わない」という失敗がありました。そこで、これを繰り返さず、稼働率を上げるにはどのような取り組みを行えばよいかを検討しました。 旧施設の失敗を検証すると、54機も導入したのでハード面の設備は十分に充実していましたが、ソフト面の取り組みが全くなされていませんでした。設備を充実させても取り組みが不十分では稼働率が上がりません。リフトが活用されるか否かを大きく左右するのは、ソフト面の取り組みであるとの結論に至りました。 リフトの普及に必要な要素の2つめとして挙げられるのが、導入後のソフト面の取り組みがきちんと行われることです。リフト導入後のポイントは次の3つです。①導入後すぐに施設長や管理者がリフトを積極的に使用するよう指示すること、②導入後すぐに介護職員にリフトの必要性と正しい操作方法をレクチャーすること、③確実に使われているかを検証することです。 当施設では、これまでリフトを使ってこなかった利用者にリフトの安全性と必要性の説明を行い、リフトの使用に同意をしていただきました。一方、職員はリフトの正しい操作方法と必要性を理解するため、公益財団法人 テクノエイド協会の「リフトリーダー」、JASPA介護リフト普及協会の「リフトインストラクター」の資格を取得しました。 その職員を中心に創設したのが「施設内リフト検定」です。全介護職員に的確にレクチャーできるよう、次のような体制を整えました。

○操作マニュアル作成

○リフトの必要性を理解するための資料、施設内リフト検定用のテキストを作成

○筆記試験、実技試験のテキストを作成

○リフト講習用のDVDと、アビリティーズ・ケアネット株式会社が監修・作成した学習用の資料の用意

この施設内リフト検定で全介護職員がリフトの必要性を理解することにより、リフトを使用した抱えない介護の実現が進みました。抱えない介護は、安心・安全であるとともに、離床の機会を増やすことで利用者の生活の幅が広がり、QOLの向上にもつながります。もちろん車いすに乗車しただけでは直接的なQOLの向上にはなりません。身体に合った車いすの使用や座位保持装置、日中活動のメニューなどの充実も必要になります。立位が取れて、リハビリの観点からリフトを使う必要のない方は、リフトを使うことによる廃用性も考えられます。案件ごとにPTの意見なども聞きながら進めています。

移乗用リフト使用の重要性

移乗用リフトの重要性は大きく分けて2つです。 1つはリフトを使用することで利用者に対する無理な姿勢や過度な力を軽減し、質の高い介護を提供できることです。正しい操作方法により、転落事故による骨折などの重大事故のリスクを回避できます。また車いすに着座するときもリフトを使用することにより、容易によい姿勢で乗せることができます。 もう1つは介護職員の負担の軽減です。リフト導入後、当施設では着実に職員の腰痛による中長期の病休者と離職が減っています。これは、最近では雇用を確保する上でも重要ではないでしょうか。より長く働ける環境は、採用時のセールスポイントとして有効だと考えています。長期ビジョンでとらえれば、安定した施設運営にもつながります。 つまり、雇用の状況が安定すれば、施設としても積極的かつ新たな取り組みが可能になり、利用者の生活の幅も広がっていくのです。移乗用のリフトは単に移乗用のツールというだけではなく、利用者のQOLの向上ならびに施設全体の質の向上のためになくてはならないものだと確信しています(資料④)。

資料④