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福祉施設の実践事例

実践事例 詳細

人材確保対策室の取り組み

種別高齢者施設
開催年2016
テーマその他創意工夫
人材確保対策室の取り組み

社会福祉法人あいの土山福祉会 エーデル土山

はじめに

当施設は10年ほど前、労働基準局から是正勧告を受けるような労働環境で、離職率は40%に達していました。状況改善のために人材確保対策室を立ち上げ、「諸規定の見直し」「ワークライフバランスの強化」「人材確保に関する検討」「福利厚生の充実」「退職理由の検討」などを行いました。人材についての基本的な考え方として「、確保」よりも「定着」に力を注ぎ、継続して働ける人員を少しでも増やしていくことを目指したのです。その結果、現在は労働環境を大幅に改善しました。
今回は働きやすい環境づくりのために行った「残業0・腰痛0・メンタル不調0」という「トリプル0」の推進についてお話しします。

トリプル0で働きやすい環境に

  • 「残業0」への取り組み
  • 当時、残業が美学という風潮があり、職員の中には残業することで自己満足感を得る者もいました。そのような考え方を変えていくため、全職員に「残業0」を率先して行うことを周知したうえで、朝礼の廃止、申し送り手順の統一などのほか、下記の取り組みを実行しました。
    ▶退勤チェックシートの記入各職員が残業した時間とその業務内容が明確にわかるようにしました(資料11)「その業務内容に意味があるのか」「どの業務が残業につながっているのか」「サポート職員で代替が可能なのか」といったことを検討し、「残業0」に向けてどこから着手してよいのかの道標になりました。

    ▶アクシデントレポートの様式の改善
    記述式からチェック方式(資料12)に変えたことで、以前は遅い人なら15分ほどかかっていたものが数分で作成できるようになりました。

    ▶伝達ツールの統一
    連絡帳やホワイトボードなど、伝達ツールが統一されていなかったので混乱がありました。現在はパソコンに一本化し無料のグループウェアを活用しています。
    「残業0」に取り組むには、施設のトップが残業をなくすことに強い決意を持ち、職員の方向性と価値観を一本化することが大切です。
    また、介護職が行っている業務の中から「利用者と関わる仕事」「利用者と関わらない仕事」をリストアップし、食器の片づけ、オムツの補充、清拭の準備といった専門性を必要としない業務を抽出し、ワークシェアを実施。そのような業務の担当者を高齢者雇用や障害者雇用で採用し、介護職はできるだけ利用者と関わる仕事に集中できる体制を構築しています。

  • 「腰痛0」への取り組み
  • 介護職の腰痛防止の取り組みとして、当施設は70床 しかないのですが、リフトを10台導入しています。さらに浴場にも天井昇降リフトを設置しています。リフトを活用することで、利用者の安全対策と職員の腰痛防止を両立させています。
    また、当法人の労働安全委員会で「どの介助が身体に負担がかかるか」を職員に労働安全チェック表(資料13)へ記入して明らかにし、介助方法の統一化を図りました。より適切な介助方法をマニュアル化(資料14)して周知することで、介護職全員が無理のないケアをできるように取り組みました。

  • 「メンタル不調0」への取り組み
  • 毎月定例で15分程度、各職員と現場の主任プラス1人(他の職員)の1対2で話を聞き、悩み相談のほか、指導したり、法人の思いを伝える「トーキング」を実施しています。
    例えば、「○○さんのトイレ誘導が苦手」という職員の相談に対し、「何が苦手なのか」を聞き、「声掛けが苦手ですぐに怒らせてしまう」といった具体的な内容を引き出します。そのうえで、解決策を話し合います。主任は「いきなりトイレ誘導のための声掛けをせずに、雑談などでコミュニケーションを取ってから、トイレ誘導をしてみてください。○○さんは会話をすることで表情が柔らかくなるので、ぜひ一度試してください」というような、すぐに実践できるアドバイスをします。また、法人としてリフトを導入するなどの改革を行う際には、法人がどのような方向性を持っているかをトーキングの場で説明します。法人が何を考えているかわからないといった不信感は離職に直結しますので、職員全体に一括して周知するのではなく、個別に説明するという手段を取るのです。
    さらに、職員間の良好な人間関係を築いたり、仕事の面白さや自己成長を感じることができるよう工夫しています。例えば「、チームワーク強化委員会」では、イベントの企画や法人内広報誌を作成しています。また新人職員の研修においては、「新人学習帳」を活用するとともに、入職3年〜4年目の職員を指導係として1年間ペアリングする「プリセプターシップ」を実施しています。
    「新人学習帳」は、法人が独自に作成したテキストで、基本的なルール、考え方、心構えから始まり、入職後に起こりそうなトラブル事例まで、全36ページにまとめています。
    「プリセプターシップ」は、入職後最初の1か月はマンツーマンで業務にあたります。さらに1年をIII期に分け行動評価することで、新人職員の成長につなげるというものです。プリセプターになる先輩職員は、養成研修を受け、新人職員が安心して仕事に取り組むにはどうすればよいのかを学んでいます。プリセプターシップ導入後、新人職員の1年以内の離職率は0%になりました。

    まとめ

    福祉業界において、人材確保が難しい状況が続いています。人材を確保できないと人手不足によって労働環境が悪化し、それにより離職率が高まり、さらに人手不足になるという悪循環になってしまいます。
    人材確保・定着については、自施設が他施設に比べてどの部分で勝負できるかをはっきりさせるべきです。当施設の場合は、労働環境に力を入れることで勝負できていると思います。実際、労働環境を改善したことで職員が定着し、職員が増えたことにより個々の仕事の負担が減り、さらに働きやすい環境をつくるための施策をうつことができています。人件費を捻出するためにコツコツと工夫を続けながら、このような好循環を続けていきたいと思います。