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福祉施設の実践事例

実践事例 詳細

福祉機器の活用による骨粗鬆症の方への自立支援

種別障害者施設
開催年2018
テーマ介護ロボット・福祉機器
介護ロボット
福祉機器の活用による骨粗鬆症の方への自立支援

社会福祉法人 わらしべ会

障害者支援施設 わらしべ園

わらしべ園施設と事例紹介

当園は、昭和56年に重度身体障害者厚生援護施設として開所しました。現在は障害者支援施設として施設入所支援39名、生活介護40名、短期入所の事業を行っています。主な利用者は身体障害者で、ほとんどの人が車いす利用です。 今回は、骨粗鬆症の方に対する福祉機器の活用により、骨折予防とともにQOLの向上につながった事例を紹介します。 事例として挙げるのは、骨粗鬆症を患っているAさん、60代女性です。身体障害者手帳1級で障害種別は結核性髄膜炎後遺症、両股・両膝関節屈曲拘縮です。障害支援区分は6で、日常生活のほとんどに介助が必要です。家庭の事情により養育環境が点々と変わり、平成15年ごろに祖父が認知症を発症したことから、十分な支援がない状態で生活をされていました。やがてネグレクトと判断され病院に入院し、大阪市更生療育センターを経て、平成21年12月に当園に入所されました。 Aさんは日常的な介助のほか、夜間は2時間おきの体位交換と、オムツ使用のため頻繁な介助が必要です。背中が丸まった状態で硬くなっているため仰向けに寝られず、左右どちらかの横になった状態で寝ています。そのため、介助時に動きが大きくなり、熟睡できずに昼間寝てしまうことがありました。また、オムツ内に排便した際、オムツの隙間から便を触ることもありました。睡眠時のこの2つの課題について根本的な解決法が見つからず、さらに骨折をしたことで骨粗鬆症の重度化が発覚し、骨折予防の対応も同時に行う必要が出てきました。

骨折による入院から退院までの経過

ある時、Aさんが38度の発熱と脂汗が出ていることから、休日診療を受診しました。レントゲンの結果、左脛骨にヒビが入っており、骨密度が非常に低い状態だと診断されました。また、翌日には、整形外科で腓骨の骨折も判明しました。その後、安静にしていましたが、右膝顆上骨折も認められ4週間の入院となりました。 主治医からは、「骨折が治癒してもAさんの骨は非常に細く脆いため、今後も頻繁に骨折は起こる」と告げられました。これを受け、当園の会議では「自分の介助で骨折させたらと考えると怖い」「女性一人体制の夜間は安全に介助ができない」「男性は協力できるが異性介助には抵抗がある」などの意見が出ました。 しかし、Aさんやご家族、後見人は当園に戻ることを要望したため、元の生活ができるように検討を重ねることになりました。

退院後の対応策の検討項目

当園では2つの対応策を考えました。 1つは介助時の骨折予防と不安解消についてです。全職員が、病院で理学療法士と看護師の助言を受けながら介助の練習を行いました。また、足同士が当たったり重なったりしないようにすることや、身体を捻るのは危険なため、必ず2人で介助をすること、他人の手などが当たると骨折の恐れがあるため、他の利用者と一緒に湯船に入ることは避けることなどの注意も医師から受けました。 もう1つの対応策は福祉機器の導入です。安全に夜間支援が行えるよう、福祉機器をレンタルで試し、活用できるものを探しました。例えば、尿吸引ロボット「ヒューマニー」です。これは、夜間の排泄課題を解決するための機器です。パットに付いたセンサーが尿で濡れると吸引します。しかし、Aさんは身体が丸まって固くなっているため、センサーが反応せず吸引できないことがありました。クッションなどを使い姿勢の工夫を行いましたが、寝付けないという課題が残りました。 次に、全自動排泄支援ロボット「ドリーマー」を試しました。尿だけではなく排泄物を感知して臀部を洗いながら吸引するものです。試用したところ、姿勢の問題で常にセンサーが作動した状態になり、一晩中洗浄音が鳴っていました。接続が複雑なため、装着時に骨折する可能性があり、安全に装着する方法を模索しましたが、問題は解決できませんでした。 当園では、センサーを使った排泄処理機器は活用できないと判断し、オムツ内への排便だけでもなくすため、「ウォシュレット付きのポータブルトイレ」を試しました。拭き取り時の介助負担が減ることで、骨折のリスクが少なくなります。時間を決めて習慣付けることにより、現在は毎日トイレで排便ができ、オムツ内の排便がなくなりました(資料①)。

資料①

次に、夜間の体位交換のため、「スモールチェンジラグーナ」を試しました。これは、クッションの膨張・伸縮により、自動で15分間隔の小さな体位交換を行い、刺激が少ないのが特徴です。しかし、動作部分への接地面積が狭いため、身体の動きはわずかでした。理学療法士から見ても、Aさんにはこの機器での体位交換だけでは不十分と判断されました。 そこで次は、空気圧の調整で体位交換を行い、体格などに合わせた調整が可能な「オスカー」を試したところ、身体に合い、きちんと体位交換されていることが確認できました。時間をかけて体位交換を行うため、睡眠の邪魔にもなりません。理学療法士や看護師と一緒に、身体が滑ってずれない角度や、身体がねじれないようにするための調整を行いました。また、職員間で、ベッド上での介助が安全に行えるかについても確認しました(資料②)。

資料②

最終的に当園が採用したのは「ウォシュレット付きポータブルトイレ」と「オスカー」です。夜間の介助がパット交換のみとなり、ワンピースの着用により少ない介助過程になったことから骨折リスクも軽減され、睡眠時の2つの課題を解決することができました。Aさんが熟睡できるようになったのと同時に、職員の介護負担の軽減にもつながりました。 これらの機器は福祉用具業者の協力により無料で試行できました。購入に関しては、ウォシュレット付きポータブルトイレは施設の設備とみなして施設側で購入。オスカーは補助金を使って本人負担の購入としました。

福祉機器の活用による効果

一人ひとりの状態や変化に合わせて適切に福祉機器を使用することは、QOLの向上につながります。例えば、自力で立てない方は介護リフトを使用することでトイレでの排泄が可能となりますし、Windows操作支援ソフトウェアによる視線入力装置を使うことで、前向きな生活の実現に取り組んでいる方もいます。 Aさんは、骨粗鬆症の治療のフォルテオ注射により骨密度が増加し、生活の広がりを見せています。骨折当時は元の生活に戻ることができないのではないかと思いましたが、福祉機器の活用により、再度骨折することなく生活をしています。Aさんの場合、本人の目標とご家族や後見人の思いがうまく重なり合い、医療職と介護職が支援目標を明確に共有し、目標に向けた連携と協同があったからこそ今の生活が実現しています。 骨折のリスクは常に存在し、課題も多く残っていますが、これからもAさんとご家族に寄り沿った介護をしていきたいと思います。