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福祉施設の実践事例

実践事例 詳細

障がい児への理解を深める 地域の保育所との交流保育

種別障害者施設
開催年2016
テーマ地域公益事業
地域貢献
障がい児への理解を深める 地域の保育所との交流保育

社会福祉法人肥後自活団 大江学園

保育活動に取り組んだ経緯

私どもの法人は前身を「熊本貧児寮」といい、私の曽祖父が明治25年に設立したもので、今年で創設125年を迎えます。今でいう児童養護施設です。さまざまな環境の変化により、昭和40年に障害児入所施設、そして、平成元年からは、障害者支援施設を併設するなどして事業に取り組んできました(資料12)。

大江学園に初めて未就学児を受け入れたのは、平成18年のことです。3歳の男児でしたが、ご家族から「就学前に一般の子どもと同じ勉強をさせてほしい」との希望を受けたことが、独自の保育活動に取り組むきっかけになりました。
その翌年から、大江学園では、入所している未就学児に対して、これまでの障害児支援により培った知識や技術、経験を生かして、特性や年齢ではなく、子ども一人ひとりに合わせた保育を展開してきました。入所施設であることから、子どもたちには、家庭から保育所に通うような体験をしてもらうため、スモックを着てもらうなど工夫しています。

交流保育を導入

保育活動を行って数年が経過したころから、いろいろな壁にぶつかるようになりました。その一つが、ある程度で子どもの成長が緩やかになる点です。2〜3歳の子どもは年上の子どものまねをすることで成長できますが、年長クラスになると、まねをする対象がいないため、発達的刺激が不足してしまうのです。集団遊びが成立しにくい、おもちゃの取り合いなどですぐに大人の介入を求めるなどの状況をどう打開したらよいか、一般の保育所にアドバイスを求めました。すると、逆にその保育所では、資料13の課題を抱えていることが分かったのです。
そこで生まれたアイデアが「交流保育」です。互いの強みを生かして課題を補い合うことが、双方のメリットになると考えたのです。
この取り組みを始めるにあたり、学園と保育所とで、何度も入念な打ち合わせを行いました。学園と保育所、それぞれの保育士が考えたプランをすり合わせたり、年度初めには年間スケジュールを組んだりと、定期的な打ち合わせを重ねています。
最初の交流保育は、学園の敷地内にあるさつまいも畑でのいも掘りです。学園の子どもも保育所の子どもも、分け隔てなく楽しくいも掘りができました。食育も兼ね、掘ったさつまいもで栄養士がおやつを作り、皆で一緒に食べました(資料14)。
また、夏には学園の大きなプールを利用した交流も行いました。学園の子どもが、保育所の子どものバタ足をまねることで、初めて自分もバタ足ができるようになったという場面が見られました。
他にも、学園の子どもが皆で保育所に行くこともあれば、学園の年長クラスだけで、保育所の年長クラスで1日体験をするなどの交流の仕方もしています。現在、2カ所の保育所と組んでいますが、社会福祉法人同士だからこそできる交流保育が実現できていると感じています。

交流保育の成果

資料15は、体育館での交流保育の様子です。左に写っている学園の子どもが、どうしてもスムーズに遊べずにいたところ、右に写っている保育所の子どもがさっと手を差しのべてくれたのです。ちょっとしたサポートで、自分と同じことができるのだと気づいてもらえた瞬間ではないかと思います。
また、人前であいさつができず、皆の輪にも入ることができずに泣いてばかりいた学園の子どもが、交流保育を続けることで、小学校に上がるころには、あいさつができるようになり、集団行動もスムーズにできるようになった例もあります。
この取り組みにより得られた成果を、次にまとめました。

交流保育による成果

  • 交流による刺激を受け、伸びる芽が早く出てくるようになった
  • 保育所の子どもが、障害のある子どもの存在を知り、地域で一緒に生活すること を「当たり前の光景」として違和感なく受け入れられるようになった
  • 保育に深みが出て専門性が高まった
  • 自分以外の存在を知り、子どもの視野が広がった

さらに、この取り組みを続けることについ て、保育所の園長先生から次のような言葉をいただいています。

異なる境遇にある子ども同士がよい刺激を与え合い、成長することができれば大変うれしい。子どもたちには、この世に生まれてきた意義や意味に気づき、感謝する気持ちを決して忘れないでほしい。

また、学園としても、この取り組みを通して子どもが年齢に応じた基礎を身につけて就学できることを期待し、かつ、保育所の困り感のある子どもに対して、障害児施設として相談窓口のような役割を果たしていきたいと思っています。
今後もこの取り組みを続けていくことで、障害に関する啓発につなげ、誰もが地域で活躍できる社会になるよう、環境整備に力を入れていきたいと思っています。