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福祉施設の実践事例

実践事例 詳細

障害者支援施設における 介護ロボットスーツの活用実践

種別障害者施設
開催年2017
テーマ介護ロボット・福祉機器
介護ロボット
障害者支援施設における 介護ロボットスーツの活用実践

社会福祉法人 翠昴会 障害者支援施設「永幸苑」

適材のHALを適所に導入し、 利用者と職員の満足度を高める

永幸苑は、千葉県四街道市にある障害者支援施設です。1991年に開設した当初、職員の平均年齢は20歳前後という若さでした。その後、ISOの取得や、人材育成のシステム化など、職員が働きやすい環境を整えた成果もあり、離職率が低下し、勤続年数が長い職員が増えました。当然のことながら、職員の平均年齢も39歳に上がりました。一方で、利用者の高齢化も進み、介護度の高い方が増え、慢性的な腰痛を訴える職員は今なお増加する傾向にあります。当施設では、これまでにも労働安全衛生の観点から、腰痛予防につながるさまざまな取り組みを行ってきましたが、2017年2月に、CYBERDYNE株式会社のHAL介護支援用(腰タイプ・防水性能タイプ)を新たに導入しました。障害者支援施設での導入は、当施設が全国初とのことです。私たちもまだ模索しながらの使用ではありますが、全国の福祉施設での腰痛予防につながることに期待を込めて、当施設におけるHALの活用実践についてご紹介します。HALとは、HybridAssistiveLimbの略で、茨城県つくば市にあるCYBERDYNE株式会社と筑波大学で研究、開発されたものです。身体機能の改善、補助、拡張、再生をすることができる世界初のサイボーグ型ロボットとして、現在、多様な場所で活用されています。(資料①)。私たちがHALを知ったのは、「自分の足で立ちたい、歩きたい」との思いを持った利用者がHAL福祉用(下肢タイプ)を紹介してくださったことに始まります。それを機に、当施設では、2010年にHAL福祉用(下肢タイプ)を導入しました。その結果、12名の利用者が自力で立ったり、歩いたりできるようになったのですが、6年にわたり使用する中で、利用者の高齢化および重度化により、HAL福祉用(下肢タイプ)の対象者がいなくなりました。そんな折、CYBERDYNE株式会社から、深刻化する職員の腰痛予防に向けてHAL介護支援用(腰タイプ・防水性能タイプ)(以下、HAL)をご提案いただき、導入することになりました。HALは、人が体を動かすときに脳から筋肉へ送られる生体電位信号を、皮膚表面に取り付けたセンサーが読み取ることで動作します。重量は約3キログラムと軽量で、バッテリー(駆動時間は約3時間)で動くため、コードなどによる制限がなく、使用場所を選びません。移乗介助のような動作において、腰部にかかる負担を軽減し、腰痛のリスクを減らすことが、最大の効果だといえます。HALの導入にあたっては、当施設の職員2名が管理者の資格を得るために、CYBERDYNE株式会社の講習および試験を受けました。HALを使用するには、その管理者から安全使用者講習を受けなくてはなりません。安全使用者講習の内容はDVDの視聴と装着練習となっています。1回につき2名の職員が講習を受け、使用できる職員を順次増やしている段階です。

資料①

HALの活用が職員の腰痛を予防し、 職員の定着率アップにもつながる

HALの装着については、慣れないうちは他の職員の手を必要とすることもありますが、慣れてしまえば1人での装着が可能になり、時間は1分とかかりません。手順は、まず、脳から筋肉へ生体電位信号を読み取るセンサーとなる電極3枚を背中、脊柱起立筋に貼り付けます。その後、電極ケーブルを取り付け、HALを背中にあてがい、ベルトで固定します。本体とセンサーをケーブルで接続することで、装着完了となります(資料②)。使用の手順は、まず、電源を1回押して、待機状態にします。その後、プラスボタンを長押しして、アシスト状態にし、アシストの程度を体感しながら5段階あるアシストレベルのなかから、自分に合ったレベルを選択します(資料③)。数字が高くなるにつれてアシスト効果が高くなるとお考えください。導入当初、物を持ち上げたり、利用者の支援を単発的に行ううえでは、腰への負担軽減を実感できたのですが、HALなしでの体の使い方と異なるため、動きにくさを感じたり、アシストを必要としない場面でアシストがかかるなど、戸惑うことがありました。それを改善するため、当施設では、管理者が積極的にHALの使用回数を増やし、どのような場面でHALのアシストが有効なのかを確認していきました。使用回数を重ねるにつれて、移乗支援や中腰の姿勢に対してHALの効果を実感できるようになりました。こうしたちょっとしたコツを、管理者が他の職員に伝えながら、効果的な使用方法を広めているところです。現状ではまだ限られた職員のみの使用になっていますが、HALを使用した職員からは、「約70キログラムある利用者の移乗支援をする際に、腰への負担が軽くなった」といった声も寄せられています(資料④)。傍目にはHALの効果は伝わりにくいと思いますが、あえて言葉で表すならば、例えば「前傾や中腰姿勢から立ち上がるときに、腰が曲がらないようにHALが支えながら、体を上に引っ張ってくれる」という説明になります。当施設で使用しているHALは防水性能タイプであり、日常の生活防水であればあらゆる方向から真水の飛沫を受けても有害な影響がないため、入浴支援で使用することができます。現在は入浴支援にのみHALを活用していますが、職員からは移乗支援や夜勤帯の体位交換などの場面でも使用を希望する声があがっています。したがって、今後は、安全使用者講習を進め、全職員が使用可能になるよう努めていきます。私たちは体が資本です。健康を損ねてしまうと、利用者に対して、よりよい支援が提供できなくなってしまいます。職員の健康は、本人のためでもあると同時に、利用者のためであると言っても過言ではありません。今後もHALを活用し、健康の維持、腰痛予防に努めることで、さらなる職員の定着率の向上と、働きやすい環境づくりを目指していく考えです。

資料②

資料③

資料④