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福祉施設の実践事例

実践事例 詳細

「ながはま子ども食堂」から地域の輪の広がりへ

子どもが元気+大人が元気=地域が元気!
種別高齢者施設
開催年2018
テーマ地域公益事業
地域貢献
「ながはま子ども食堂」から地域の輪の広がりへ

社会福祉法人 グロー
養護老人ホーム ながはま

子ども食堂開設の経緯

当施設が所在する滋賀県長浜市にある神田地区は、世帯数444世帯、人口1,207人、高齢化率33.89%、年少人口率は9.2%と、子どもの数が非常に少ない地域です。現在、小学生は40名程度であり、核家族化の影響で、地域内での世代間交流が難しくなっています。こうした中で、はじめに子ども食堂を行うことになった経緯を説明します。 まず、滋賀県社会福祉協議会の中にある、滋賀県内の社会福祉協議会や福祉団体などでつくる「滋賀の縁創造実践センター」が子ども食堂を開設する大きな柱となっています。このセンターは、子どもや高齢者、障害者など、制度の狭間で支援を受けられずに困っている人を支えるプロジェクトです。この中で、子ども食堂は県内全域に広げていく主たるプロジェクトの一つに盛り込まれています。 そして、当法人の職員がこのプロジェクトメンバーに入っていたことや、法人が高齢者施設内で子ども食堂を開いたことは、全国的に一度もなかったことなどから、社会貢献の一環として子ども食堂を始めることにしました。 しかし、子ども食堂に関する専門的な知識を持った職員がいなかったため、子どもの孤食を防ぐための目的で行うのかや、対象を貧困の子どもたちに限定するのかなど、子ども食堂の位置づけから皆で検討していきました。その結果、「誰でも参加でき、地域全体で子どもを育てられる子ども食堂」として立ち上げることにしました。子どもを中心に地域のつながりをつくり、地域全体を活性化させたいという思いで考えました。 しかし、地域住民の方々は「子ども食堂は貧困な子どもが行く場所」とのイメージを持たれており、子ども食堂開設当初の子どもの参加者は10人を切っていました。 そこで、子ども食堂開設以来「協力会」と称して施設運営を手伝っていただいているボランティア団体に、地域への理解を浸透するための協力をお願いしました。その結果、少しずつ理解が深まっていき、子どもの参加が増え、地域からも好意的な声をかけてもらえるようになり、自治会の福祉施策に子ども食堂が盛り込まれるまでになりました。

「ながはま子ども食堂」の活動

現在、私たちが行う「ながはま子ども食堂」は、次のような内容で開催しています。

  • 開催日時…毎月第3水曜日/16:30~19:00
  • 参加者…自由(事前申込不要、年齢制限無し)
  • 参加費…200円(子どもは手伝いをすれば無料)
  • スタッフ…施設・法人本部職員3~4人/学生ボランティア2~3人/調理ボランティア4~5人
  • 1回の予算(食材費)…4,000~5,000円

現在、多いときで30人近くの子どもが参加しています。メニューは1カ月前の開催日に発表しています。子どもの意見を取り入れ、食を楽しめるように変化をつけています。 当日の流れは、次の通りです。

  • 16:00…スタッフ集合。その日のメニューや作る手順についてのミーティングを行う
  • 16:30…子どもたちのお出迎え。調理開始。食事の時間まで、子どもたちは宿題をしたり遊んだり、調理の手伝いをしたりと自由に過ごす
  • 17:45…食事の準備
  • 18:00…食事開始
  • 19:00…終了

また、子ども食堂では、季節に合わせた行事も行っています。夏にはスイカ割りやヨーヨー釣り、秋には焼き芋、冬にはクリスマス会や雪合戦など、子どもたちや地域の方々と一緒の行い、一人ひとりが地域とのつながりを実感できる工夫をしています(資料①)。

資料①

なお、子ども食堂には、幅広い年齢の子どもや地域の方々が集まります。そのため、子どもたちにとって、いろいろな人との関わり方を学ぶ機会になっています。特に、調理や洗い物の仕方などを子どもたちに一度教えると、その子どもが知らない子どもにまで教えてくれます。子ども食堂という地域の拠点において、いろいろな人と関わることで、子どもたちの社会性や人間性が育まれ、地域全体で成長を見守ることができます。 参加している子どもの保護者からは、「食堂に参加して以来、一緒に料理を作ることが増えた」「子どもが進んで洗い物を手伝うようになった」などの声をいただいており、子ども食堂で得た経験が家族関係の中でも活かされていることがわかりました。

子ども食堂を通した地域とのつながり

こうした子ども食堂の活動は、地域の人たちとの間にさまざまなつながりを生んでいます。例えば、個人や団体が積極的にボランティアとして参加してくださるほか、田畑を所有されている住民の方々からは、お米や野菜を提供いただき食材の確保に協力いただいています。また、将来、保育士を目指す学生ボランティアの人たちにとっては、実習のような経験ができる場にもなっているようです。さらに、参加する子どもの保護者からは「他の親御さんや地域の方々と話をする機会が増え、子育ての悩みなどを共有できる」などの声が聞かれ、保護者同士や保護者と地域のつながりを生む場にもなっていると感じています。また、地域の企業からは物品の寄付をいただくなど、子ども食堂の啓発活動を行っていただくようにもなりました。 一方で、子ども食堂を運営する上での課題として、例えば、子どもの参加は増えているものの、大人の参加が比較的少ないことや、依然として「子ども食堂=貧困」とのイメージを持っている人が地域に多いことです。そしてボランティアやスタッフの確保や調整、生活の中で何らかの困りごとがあり、寂しさやしんどさを抱えた子どもへの対応、さらに事業を継続していくための資金についてなど、多くの課題があります(資料②)。

資料②

こうした課題を解決するため、地域の学校などの教育機関やスクールソーシャルワーカーと連携しているほか、県社協の主催で県内の子ども食堂が一堂に会し、課題やその解決法を共有する「子ども食堂実践者交流会」に参加しています。 これからも当施設は、子どもたちが大人になったときに、「子ども食堂でいろいろな大人や友達と出会い、皆で遊んで、ご飯を食べて楽しかった」「この地域で育ってよかった」と思ってもらえるような居場所づくりを目指していきます。 子どもも大人も、誰一人もれることなく、地域が元気になる社会の構築を目標に、今後も社会福祉法人の使命として、子ども食堂の運営に取り組んでいきたいと思います。