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第1回 マスク

コロナ禍におけるアクセシブルな製品・サービス

 [オンラインイベント「福祉機器Web2020」における特別企画によせて]
 新型コロナウィルスの感染拡大は、日本を含む世界中の「人たち」に生活様式の変更を迫り、それに伴い製品、サービス、システムも変更が必要になっています。
 世界中の「人たち」には、国際福祉機器展H.C.R.で紹介される製品やサービスなどの対象者である高齢者・障害のある人たちも当然含まれています。けれども、製品・サービス・システムがコロナ禍で変更される際に、高齢者・障害のある人たちを考慮した配慮は、なされない場合が多く見受けられます。また、高齢者・障害のある人たちへの配慮がされた製品・サービスも、当事者や関係者に情報として届いていない場合も多く見受けられます。
 コロナ禍で国際福祉機器展H.C.R.は本年、中止となってしまいましたが、今般、その主催者である一般財団法人 保健福祉広報協会が運営するH.C.R.Webサイトで開催されるオンラインイベント「福祉機器Web2020」において、「コロナ禍におけるアクセシブルな製品・サービス」の特別企画コーナーを設置することとなりました。本コーナーでは、毎回、さまざまなテーマを設け、紹介していきます。

 新型コロナウィルスの感染拡大によりマスクの不足が深刻化しました。街の薬屋やスーパー、コンビニなどで50~100枚が箱に入ったものや、数枚が1セットになって袋に入っているモノが、所狭しと置かれていたあのマスクが、どの店からも消えてしまいました。ほぼ同時期に店から姿を消したトイレットペーパーは、買い占めが一段落すると定期的に並ぶようになりましたが、マスクはその後も「本日、マスクの入荷はありません」と店頭に表示する店が続きました。
 感染拡大は花粉が飛ぶ時期や風邪の流行時期とも重なり、需要と供給のバランスが完全に崩れてしまいました。それでもこの事態の初期段階では入荷する店もあり、そこには朝から長蛇の列ができ、ニュースでもたびたび報道されました。さらに、その頃は大量に仕入れてネットで高価格による転売を行い荒稼ぎする業者が現れ、転売禁止の法を出すまでに至りました。そのようななか、発想の転換をする人たちも現れ始めたのです。ふた昔前までは、マスクといえば中にガーゼを入れる布製で、何度も洗って使えるタイプでした。布製であれば、手作りもできます。使い捨て文化に警告を発するように、布製マスクの型紙を掲載する雑誌やサイトも登場しました。
 学校が休校となる中で、マスクのこの状況を知り、家での時間で500枚もマスクを手作りし、喫緊にマスクが必要な高齢者施設に寄付した小学生がマスメディアで紹介され、大切なことを多くの人に気づかせてくれました。

写真 手作りのマスク

 それは、使い捨て文化への警告だったり、非常時でも他者のことを思える気づきと実行力です。企業によっては、感染防止率を増すマスクの開発に取り組んだり、左右の耳にかけるゴムにクリップを付け、品薄になっていないキッチンペーパーや布をマスクの大きさにしたものを挟んでマスクができるものを考え販売したりと、課題解決にむけてさまざまな試みが生まれています。
 そんななか、聴覚に障害のある人たちの中で「自分は音や音声が聞きづらい難聴で、ふだんは補聴器を付け、会話は相手の声とその声を相手の口の形を見て補いながら理解しています。それが、マスクでは口の形が見えずに相手が何を話しているかがわかりづらくなるのです」といったネットへの書き込みが複数ありました。
 以前、筆者が台北に行った時、101タワーに入っているフードコートの店員さんと調理をしている人たちが、紙の使い捨てマスクではなく、透明なプラスチックでできたマスクで接客や調理をしていたのを思い出しました。その後、日本の飲食のチェーン店のいくつかの店舗で透明マスクを見かけました。

透明なマスク

 さらにこの時期、この透明マスクも品薄だろうと思いながら、サイトを検索していると、ある動画を見つけました。
 それは、ウィルス感染が日本より拡大しているアメリカの学生の試みです。手作りのマスクを作るまでは、日本の小学生の試みと同じなのですが、違うのは布のマスクの中央を長方形に切り取り、そこに透明なシートを縫い込んでいくのです。その報道のタイトルには、「耳の不自由な人のためのマスクを作る学生」とありました。
 このような事態での中ではありますが、貴重な工夫も生まれているのです。

アメリカの学生が作った透明マスク(出典:GoFundMe)